ハーブが大好きです。
いつから?
どうして?
今日は私がハーブを育てて
癒されたお話をもとに、
園芸療法についてお話しします。
最初はベランダガーデニングから
今から約20年前、いろいろあって燃え尽きて、しばらく静養しました。それから数年後、現在のマンションに。がらんとしたベランダに、少し緑が欲しくなりました。
ラベンダーとペパーミントなどの栽培を始めました。動機はよく思い出せません。土と香りへの軽い憧れだったと思います。なぜ「香り」だったのかも忘れましたが、本能的に癒されたかったのでしょう。そこから少しずつハーブを中心に苗を買い足し、育てていきました。
そのうちにベランダガーデン作りが楽しくなり、ハンギングに凝ってみたり、ガーデンテーブルセットや小物を買ってみたり。ハーブだけでなく、野草のように健気な姿の草花も増えた一方で、バラに凝ったりもしました。
種まきや植え付けで土に触れると五感が刺激され、心が躍るような感覚に包まれます。実家の庭で遊んだ小さい頃を思い出してなごむこともあったし、何かを作り上げているという高揚感を感じることもありました。そしてもっとシンプルに言えるのは、植物を育てていると「気持ちがいい」ということでした。
あれは園芸療法だった?
「園芸療法」という言葉を知ったのは、その後しばらく経ってからのことでした。園芸療法は、1950年代にアメリカや北欧で始まった、園芸を通じて心身の機能回復を図る療法とされています。現在は日本でも、認知症患者さんのリハビリに園芸療法を取り入れている施設も多いようです。科学的研究も多くなされています。
植物のある環境に身を置いて癒されるだけでなく、植物を栽培するなどして、その生長に自ら関わるのが園芸療法です。その点では作業療法の一つでしょうし、植物や自然を相手にするという意味では、生きている実感や喜び、安心感を思い出させる、ウェルネス的な取り組みでもあるでしょう。
私が楽しんできたベランダガーデニングも、いま考えると、そういう行為だったように思います。例えばハーブの植え替えは、視覚や嗅覚から株や根の健康状態についての情報を取り入れ、手の触覚も手伝いながら、土の落とし方・根の切り方・株の切り戻し方などを頭で計算します。心と身体が刺激され、脳の活動が活発になります。ガーデニングをもっと知りたい、ハーブについて知りたいという欲求が生まれ、自分の中の「学びたい」スイッチも再び入りました。
毎日少しずつ「したいこと」や「できること」が増えていき、ベランダガーデンという貴重な居場所ができました。自分の居場所が増えると、自信も取り戻せていきました。そしてもう一度書きますが、植物を育てることによって「気持ちがいい」と感じる時間が増えていきました。
土の中の細菌が抗ストレス力を高めてくれる
コロラド大学の研究チームが、土の中に棲む細菌マイコバクテリウム・ヴァッカエ(M.ヴァッカエ)についての研究を行っています。
M.ヴァッカエには免疫調節、抗ストレス、抗炎症の作用があると、同チームは明らかにしています。例えばM.ヴァッカエを注射したマウスにストレスを与えると、マウスのストレス反応が減り、抗炎症作用が脳に長く続くというものです。2019年にはその作用のカギとなる物質も確認され、将来は「抗ストレス・ワクチン」を作ることも可能になるのではと、世界で注目を集めました。
園芸療法は一つの補完療法
私はいわゆる西洋医学を基礎とした現代的な医療を、基本的に信頼しています。現代医療が万能という意味ではありません。信頼していますが、それだけでは十分ではないのだろうなということは、漠然と思っていました。その漠然とした思いに、ベランダガーデニングやハーブ栽培が一つの道筋を示してくれました。メディカルハーブへの関心も、そこから生まれました。
落ち込みが続くとき、抗不安薬(精神安定剤)を飲むと何となく気持ちがやわらぎ、ネガティブな考えに走ろうとする焦りを消してくれます。けれど、その先のポジティブな考えへと舵を切るのは、自分自身の役目です。
本当に辛いときは、ポジティブ・シンキングへのハードルが高い時期もあるでしょう。私が心底辛かった時は、道端の野草に嫉妬しました。彼らの生命力がうらやましかったのです。自分はひょっとして、この野草ほどの価値さえないのではと感じたこともありました。「野草ほどの」と考えるところに、人としてのおごりもあったでしょう。
ハーブを育てる時間は、土や植物から自然の営みを教えてもらって謙虚になれる時間でもあります。謙虚であることは、卑屈になることとは違います。卑屈とは自分を否定する態度。謙虚さとは自分を否定せず、かといって背伸びもせず、素直でいること。
道端の草に嫉妬して自分を否定する態度からは何も生まれなかったけれども、その草の生き方から自然の摂理を教えてもらうようになると、見える世界が再び、少しずつ広がっていきました。世の中には学ぶべきものがたくさんあることをまた思い出すと、自然に視線が上がっていきます。土が草が、私をもう一度引き上げてくれました。
それは西洋医学だけでも東洋医学だけでも、ましてや抗不安薬がセロトニンの再取り込みを邪魔してくれるだけでは、なし得ないことだと思います。
ハーブを育てて毎日を楽しく
土と鉢とスコップと、種か苗さえあれば誰にでも始められるのが園芸です。ハーブを育てればそこに「香りを利用する」という楽しみが加わり、癒しの効果が高まります。毎日水をやりながら、葉っぱを触ってご機嫌伺いをしつつ、香りを楽しんでいます。
ハーブティーへの利用はもちろんのこと、私のような食いしん坊には、ハーブを食べる楽しみもあります。バジル、タイム、オレガノ、ローズマリーなどは、よく料理に使います。ラズベリーを育てていた時は、ベランダ仕事をしながら実をつまみ、口に入れていたものでした。今はワイルドストロベリーが、その楽しみを提供してくれています。
年齢とともに体力が衰え、ハーブの鉢も随分整理しました。でも、今もベランダのハーブからは日々、ささやかな力をもらい続けています。
あなたも何か力が欲しいなと感じたら、ハーブをひと鉢育ててみませんか? 土の匂いや草の爽やかな香りが、あなたの内に眠る活力を、再び目覚めさせてくれるかもしれません。
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お疲れなのは頑張りやさんだから。
そんなあなたに
癒しのハーバルライフをご提案する
シデリティスです。