メディカルハーブ

「緑の薬箱」にぜひ加えたいジャーマンカモミール

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【ジャーマンカモミール】

学名:Matricaria chamomilla(Matricaria recutita)

キク科

使用部位:花部

主な作用:消炎、鎮静、鎮痙、駆風

注意:キク科アレルギーの人は注意が必要。

ジャーマンカモミール©︎シデリティス


ジャーマンカモミールは

和名を「カミツレ」と言います。

化粧品や入浴剤などで見かける

「カミツレエキス配合」の、

あのカミツレです。

内用・外用に大活躍する万能ハーブ。

一家にひと袋、おすすめです!

ハーブに興味があるけど何を買えばいい?

と聞かれることが増えました。よく「ジャーマンカモミールはどうでしょうか?」とお答えします。作用が穏やかで幅広い用途に使え、香りもフルーティで万人向きだから。キク系の少々「もあっ」とした香りが苦手な人は、ペパーミントなどとブレンドすれば飲みやすくなります。

「ジャーマン」と「ローマン」の違い

ハーブとして使うカモミールには2種類あります。ジャーマンカモミールとローマンカモミールで、ティーなどに用いるのは一般にジャーマンカモミールです。

どちらもよく「青リンゴの香り」と表現されますが、よりリンゴの香りに近いのはローマンでしょう。ただし実際にお茶にして飲むとローマンの花には少し苦味があるので、お茶に向いているのはやはりジャーマンの方。フルーティな味は、ミツバチになった気分です。

以下は両者の大まかな特徴です。


【ジャーマンカモミール】

・一年草

・花だけが香る

・開花後、徐々に頭花(中心の黄色い部分)がぽっこり盛り上がってくる

・頭花の内部は空洞


【ローマンカモミール】

・多年草

・花を含めて全草が香る

・花は平たく咲く

・頭花の内部は空洞ではない

頭花が盛り上がってくるジャーマンカモミール©︎シデリティス


ジャーマンカモミールティーの作用

ジャーマンカモミールは、ヨーロッパでは伝統的なハーブとして大変よく用いられてきました。

お茶にして飲むと、胃腸の調子を整える、イライラした気分を安定させる、穏やかな眠りに導くなどの効果が期待できます。イタリアンレストランで食後にハーブティーをオーダーすると、ジャーマンカモミールティーが出てきたこともありました。

またヨーロッパでは、興奮して寝付きの悪い子どもや疝痛(さしこみ)を起こした乳児に飲ませることもあるようです。胃腸が何となく不調なら、食間に飲むのもおすすめです。

普段、私がジャーマンカモミールティーを飲みたくなるのは、寝つきが良くないときです。数ある不眠改善ハーブの中で最もマイルドなので、私にとっては、このハーブがファーストチョイス。熱湯を注いで5分以上蒸らし、濃いめを飲むことにしています。

フレッシュジャーマンカモミールティー©︎シデリティス


『ピーターラビットのおはなし』に登場するハーブ

「ピーターラビット」というイギリスの児童書シリーズがありますね。1902年、シリーズの最初に出版された『ピーターラビットのおはなし』は、ハーブ好きにはとても興味深い内容です。

ウサギのピーターが母親の言いつけを破って隣のマクレガーさんの畑に入り、野菜を食べ荒らしてしまいます。レタスや二十日大根をもりもり食べて胸焼けを起こしたピーターは、パセリを探しに行きました。

(と書いてあるのですが、消化不良に効くのはパセリのタネの方で、葉は腎臓や利尿向けのようです)

さて夜になると、お腹の痛いピーターはベッドに寝かされました。そこでママラビットがカモミールを煎じて、「寝る前にひとさじ」飲ませる場面があります。

ピーターのお腹を思いやってのことかもしれないし、怒ったマクレガーさんから命からがら逃げてきて、興奮気味だったピーターを落ち着かせようとしたのかも。そんなふうに、絵本に自然に登場するほど親しまれてきたハーブです。

余談ですが「ピーターラビット」には、他にもハーブに関する描写が登場します。「うさぎたばこ」という草は、ラベンダーのことだと書いてあります。ラベンダーの花をパイプに詰めて香りを楽しむなんて、随分しゃれたウサギです。

レタスをたらふく食べた子ウサギたちが眠り込んでしまい、マクレガーさんに捕まるお話も。レタスに催眠効果があると昔は信じられていたのかもしれませんが、現代の研究では確証は得られていないようです。

スキンケアにも重宝

カモミールはちょっとした湿疹やかぶれなどの、皮膚の炎症にも働きかけます。カマズレンやα-ビサボロールという成分に抗炎症作用があるためで、「慢性口内炎の患者を対象とした調査では、82%の治験者がカモミールのエキスで痛みが緩和したと答えた」(『メディカルハーブ事典』2014年、日経ナショナルジオグラフィック社、P.147)という報告もあります。

湿布剤、入浴剤、花を漬け込んだ浸出油やチンキで作った軟膏。口内炎には濃いめのティーでうがいを。いろんな場面で使われるので、主にヨーロッパでは「万能ハーブ」と呼ばれています。

私は冬になると、ジャーマンカモミールとカレンデュラの花を漬け込んだ植物油とミツロウで、バーム(軟膏)を作ります。乾燥してチクチクする顔や入浴後のかかとに塗り込めば、ちょっとしたかゆみはおさまり、あとはしっとりします(カレンデュラにも皮膚の修復作用があります)。


いかがでしたか? 「緑の薬箱」に入れるハーブを買いにいくときは、真っ先にこのジャーマンカモミールを思い出してくださいね。

* * * * *

お疲れなのは頑張りやさんだから。

そんなあなたに

癒しのハーバルライフをご提案する

シデリティスです。

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ハーブに癒されて、ハーブの伝道師(?)になりました。ハーブの栽培から活用、精油の利用まで、自身の体験なども交えながら書いていきます。ハーブをご一緒に楽しみましょう!