【エキナセア】
学名:Echinacea purpurea, E. pallida, E. angustifolia
キク科
使う部位:地上部、根部
主な働き:免疫賦活、創傷治癒、抗菌、抗ウイルス、消炎
(東京堂出版『メディカルハーブの事典 改訂新版』より引用)
免疫力に注目が集まる昨今。
この免疫力を整えるハーブとして
有名なものの一つがエキナセアです。
主な働きと使いかたを
まとめてみました。
北米先住民のお助けハーブ
エキナセアはもともと、北米の先住民が風邪や伝染病、歯痛、悪性腫瘍などの治療に使っていたハーブです。あるとき毒蛇にかまれた先住民がエキナセアを使って治療しているのを、ヨーロッパ人が目撃。この不思議な植物を持ち帰り、19C末にはヨーロッパで栽培がスタート。その関係で、特にアメリカやドイツなどで研究が進められてきました。
現在メディカルハーブとして使われているのは、エキナセア・プルプレア、エキナセア・パリダ、エキナセア・アングスティフォリアの3種類です。花冠部がトゲトゲした形になるので、Echinaceaという属名はギリシャ語のechinos(エキーノス=ハリネズミ)に由来しています。
写真は我が家で育てたエキナセア。プルプレアの別品種で、ダブルデッカーという名前です。花冠部に二階建てに花が咲きます。花色はちょっと紫がかった、くすんだピンク。細長い花弁がハリネズミの針のようについています。アップで見ると楽しいのですが、まぁまぁ地味な見た目です。
ちなみに、キツネや犬に寄生する条虫エキノコックスの「エキノ」も語源は同じ。幼虫は粒(kokkos:コッコス=穀物、種子)みたいな形で成虫がトゲ形です。エキノコックス症は肝臓をやられるので、いくらかわいくてもキタキツネには触っちゃだめですよ!
ウイルスや感染症との戦いをサポート
さて現在分かっているのは、エキナセアには人間の免疫システムが、ガンや感染症、ウイルスと戦うのをサポートする働きがあることです。特に重要な働きを担うのは、多糖類、糖たんぱく質、イソブチルアミドなどのアルキルアミドという物質と言われます。
試験管レベルではさまざまな研究が行われています。ガン細胞を自然死へと導く、マクロファージの働きを活発にする、インターフェロンの産生を促進する、などなど。予防効果の有無については意見が分かれるようですが、エキナセアを普段から用いていると風邪をひくリスクが半分になり、風邪をひいても治るまでの時間が1日半短くなる可能性があるという研究もあります。
多糖類とはブドウ糖などの単糖類が10個以上つながったもの。マクロファージはウイルスなどの病原体が体内に侵入したとき、真っ先に駆けつけて戦ってくれる頼もしい細胞。このとき体内でつくられ、病原体の増殖を抑える物質の一つがインターフェロンです。
ウイルスの増殖にかかわる物質の働きを阻害
インフルエンザウイルス、鳥インフルエンザウイルス、単純ヘルペスウイルスなどの動きが、エキナセアの抽出物によって抑えられたとする研究もあります。
ウイルスは自分だけでは増殖できません。生物の細胞に侵入し(=感染)、そこで自分のコピーを作って外へ送り出すことによって増殖します。
たとえばインフルエンザウイルスの表面には、スパイクのような突起があります。これらはヘマグルチニンとノイラミニダーゼという(舌をかみそうな名前の)物質で、ヘマグルチニンは生物の体内に入った後、突起で細胞を引っ掛けてくっつきます。原っぱで遊ぶと服について困った、あの「ひっつき虫」みたいなものですね。ノイラミニダーゼは、細胞内で作られたウイルスのコピーを(増殖のために)細胞から切り離す役目をします。
インフルエンザウイルスなどを用いたこの研究では、ヘマグルチニンとノイラミニダーゼの働きをエキナセアが阻害しました。ウイルスによる感染や増殖を、エキナセアが邪魔したのです。
インフルエンザウイルスを不活性化するワクチンはヘマグルチニンと結合することで効力を発揮しますし、タミフルなどのインフルエンザ治療薬は、ノイラミニダーゼの働きを阻害することでウイルスの増殖を抑えます。これらの薬と似た働きがエキナセアにあるのは、とても興味深いですね。
ティーやチンキで
エキナセアを体に取り入れるには、ハーブティーが最も手軽です。
お茶の入れ方はとっても簡単。ポットに入れて熱湯を注ぎ、フタをして5〜10分待つだけ。ハーブティーの入れ方はまた別の機会に書きたいと思いますが、少し濃いかなと思うくらいにした方が、いろいろな成分がしっかりと出ますよ。エキナセアは干し草のような風味のお茶で、飲みやすいです。
先ほど予防効果については意見が分かれていると書きましたが、エキナセアティーは予防的に飲むより、風邪の引き始めに1、2時間おきに飲むのがおすすめです。
有効成分をもっとおトクに取り出せるのがチンキです。チンキとは、ハーブなどをアルコールに浸けて有効成分を抽出したもの。ハーブにはいろいろな有効成分が含まれていますが、お茶にするだけでは水溶性の成分しか取り出せませんし、オイルに浸けただけでは脂溶性成分しか取り出せません。アルコールは水溶性・脂溶性どちらの成分も取り出せるところがおトクです。
エキナセアのチンキは治りにくい傷に外用として使えますし、風邪の引き始めに摂取してもOKです。私は冬になるとよく、このチンキをお茶に入れて飲んでいます。もともとお酒に弱いので数滴で十分ゴキゲンに。ゴキゲン目的ではなく健康づくり目的で摂取するなら、カップ1杯のお茶にスポイトで30滴くらい(1ml以上)は入れた方がいいようです。
収穫は開花期がベスト
エキナセアのチンキは、お茶として飲むときは気にならないのですが、1滴なめてみるとピリリと刺激を感じます。30分経ってもその感触が残るほどの刺激です。
このピリリの元はアルキルアミドで、舌のマヒを起こす物質だとか。北米の先住民はこのピリリによって、エキナセアの品定めをしていたそうです。チンキのでき具合もピリリで評価できそうですね。
アルキルアミドは開花期に最も増えるそうなので、栽培する方がおられましたら、ぜひその頃に収穫してください。
ご注意
エキナセアに副作用などは知られていませんが、「結核、白血病、膠原病、多発性硬化症、エイズ、HIV感染及びその他の自己免疫疾患のような進行性疾患には禁忌」とされています(『メディカルハーブの事典 改訂新版』より引用)。
またブタクサアレルギーの人は、エキナセアの使用は控えた方が安全です。
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