メディカルハーブ

スパイスの宝石、クローブ

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【クローブ】

学名:Syzygium aromaticum

フトモモ科

使う部位:つぼみ

主な作用:抗菌、鎮痛、消炎、局所麻酔

注意:高濃度の精油が肌に付くと、かぶれることがある。


キッチンに

クローブを常備しています。

チンキは薄めてうがいに使えるし、

冬はポマンダー作りや

クリスマスブレンドの紅茶に利用。

以前はビーフシチューにも使いました。

スパイシーでいて荘厳な風味が、

ずっしりと出ます。

そして実は害虫よけにも使える、

便利なスパイスなんですよ!

歯医者さんの香り?

原産地はインドネシアのモルッカ諸島。中国では紀元前からすでに使われ、日本にも5、6世紀には入っていたようです。大航海時代は胡椒、ナツメグ、シナモンと共にスパイス戦争を巻き起こし、現在も「世界4大スパイス」の一つと言われています。

熱帯樹木チョウジノキに咲く花の、開いていない蕾を乾燥させたものがクローブです。釘のような茶色のスパイスで、昔はよく「丁子(ちょうじ)」と呼んでいました。「そんなの使ったことないわ」という方でも、香りの記憶はあるのではないでしょうか。

クローブの精油の香りをかぐと、なんとなく歯医者さんの香りがします。特に昔の歯医者さんの記憶がある方はそうだろうと思います。香りの正体はオイゲノールという物質。歯科医院で局所麻酔や詰め物などに使われている物質で、明治時代からのロングセラー歯痛薬「今治水(こんじすい※1968年より『新今治水』)」にも、この成分が含まれています。

精油の香りにはオイゲノール臭に加えて、まったりした甘さも感じられます。バニラの香りを生み出すバニリンという物質も含まれているためでしょうか。渋さや重さ、強さ、そして甘みも感じるクローブ。どこか神秘的で荘厳な香りは、静かなクリスマスにも似合います。

歯痛や頭痛をやわらげるハーブティー

スパイスとしてのクローブには他の成分も自然に含まれていますので、私には歯医者さんというよりはガラムマサラや、中国のミックススパイス「五香粉(ウーシャンフェン)」のイメージがあります。

さて、この鎮痛・消炎・局所麻酔などの作用を生かし、クローブのティーは歯痛や頭痛の症状をやわらげる目的で飲まれます。伝統療法では、パウダーを健胃薬として用いてきました。

クローブだけでお茶を作っても、少し飲みにくいかもしれません。そのようなときはオレンジピールとブレンドすると、香りがパッと明るくなって飲みやすくなります。

オレンジポマンダー作りに欠かせないクローブ

2021年のアドベントは11月28日に始まります。クリスマスといえば、私がここ数年作り続けているのがオレンジポマンダーです。ポマンダーとは中世ヨーロッパで使われていた、ハーブや香料を入れた香り玉のこと。当時は魔除けに使われたそうで、ペストなどの伝染病が流行した時は、空気を浄化するために強い香りの香料を入れて携帯されたとか。

この香り玉を模して、オレンジなどの果物を使って作るのがフルーツポマンダーです。今ではクリスマスのクラフトとしても親しまれています。使用するのはオレンジとクローブ、そしてシナモンなどのパウダースパイス。

クローブの香りはオレンジの香りとの相性が抜群で、オリエンタルな雰囲気を生み出してくれます。オレンジに模様を描くようにクローブを挿していき、最後にスパイスパウダーをまぶして3週間以上乾燥させれば完成です。


オレンジポマンダー©︎シデリティス


ゴキブリやダニが嫌がる香り

人間にとってはうっとりするようなクローブの香りですが、ゴキブリはこの香りを嫌うと言われます。ポマンダーやクローブを乗せた皿を置いておくと、周辺から姿が消えるのだとか。クローブの精油を小皿に数滴落として、キッチンの隅に置いておくのも良さそうです。

我が家には幸いめったに出現しないので試していませんが、経験談がネットにあふれているので、トライする価値はあるのではと思います。

クローブの精油が蚊よけに効果を発揮したという報告や、オイゲノールや、オイゲノールに似た構造の物質がヒョウヒダニ防除剤として使える可能性があるという報告もあります。

精油と無水アルコール(またはエチルアルコール)、精製水があれば、虫除けスプレーが作れます。ただしクローブの精油は刺激が強いので、皮膚に原液がつかないよう注意が必要です。

料理にも活躍するスパイス

洋食作りが好きだった母がスープストックを作るとき、クローブを挿したタマネギを鍋に入れていたことを思い出しました。クローブは豚肉料理やビーフシチュー、アップルパイなどにも合い、スパイシーで温かな風味をつけてくれます。

クローブは、グリューワイン(ホットワイン)にも欠かせません。赤ワインにオレンジピール、クローブ、シナモンなどと砂糖を加えて火にかけると、シナモンの甘い香りをクローブの渋い刺激が引き締めながら、温かい香りが広がります。


紅茶にも合います。歯痛止め目的でなくても、例えば厚めのオレンジスライスにクローブ2本くらいを挿して、熱い紅茶に浮かべてみてください。オレンジポマンダーのように、クリスマス気分の漂うティータイムになるでしょう。

なおクローブは香りや刺激が強いため、使用量は控えめに。砕くとえぐみが出るので、お茶や料理にはそのまま使う方がおすすめです。

* * * * *

お疲れなのは頑張りやさんだから。

そんなあなたに

癒しのハーバルライフをご提案する

シデリティスです。

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ハーブに癒されて、ハーブの伝道師(?)になりました。ハーブの栽培から活用、精油の利用まで、自身の体験なども交えながら書いていきます。ハーブをご一緒に楽しみましょう!